山田風太郎 魔界転生 

柳生忍法帖で「俺だけが弔える女がいる」というあまりにカッコいい台詞をはき颯爽と去っていった十兵衛先生が又帰ってきた!
今回の敵は人一倍の生への執着と人生への絶望を糧とし、魔道で再びこの世に生を受けた宮本武蔵、荒木又右衛門、宝蔵院胤舜、といた剣豪たち魔界転生衆10名、そしてその背後に控えるは南海の竜 徳川頼宣。この最凶最悪の敵を前に十兵衛よいかに!


山田風太郎版オールスター夢の競演といった様相の本作、忍法帖のなかでも一ニを争う傑作といわれるだけある。十兵衛vs時代的にありえない過去の剣豪の対決を忍法魔界転生という力技で捩じ伏せ実行した山田風太郎の脳力にただただ唖然。そしてそれを書ききる筆力にも唖然。
ただ、新聞小説なのでどうにもブチブチと切れていてテンポが悪い。それでも充分に面白いですが。
それにしてもこんなのが新聞小説か。エロ描写とかあるよ!チャンバラだから手足がちょん切れたりするよ!これが掲載OKなんて、昔は新聞もおおらかだったのかー。


ちなみに、天草四郎は映画版だとメインキャストですが、原作だと魔界転生衆の一人に過ぎず途中でスパッと殺されます。

そして、今回も冴え渡る十兵衛先生の行き当たりばったり&うっかり。でもかっこいい。「かっこいいのにうっかり」キャラを書けるのは風太郎先生だけ。
そしてこれを演じられるのは、やはりサニー千葉以外にありえない。佐藤浩市では真面目がすぎる。

カプコン鬼武者2で松田勇作というキャッチーなところにとらわれず、きちんと若い頃のサニー千葉でキャスティングしなかったことが本当に悔やまれるなあ、って若い頃や死んでしまった俳優の活躍をもう一度見れるあの技術こそまさに忍法魔界転生じゃないか。ぼくらは魔術の時代に生きてたのだ。